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執筆者の写真超法寺の住職

「布施」する心

近年の流行りに【断捨離】があります。煩悩だらけの私はとかくモノが棄てられない人であります。しかしながら最近はちょいちょい棄てているのですが、それでもやはり小物、CD、仏教書が幅を利かせています。


【断捨離】は、ヨガの行法を基本にして、それを日常生活に応用した考え方です。

○「断行」捨てる。手放す。

○「離行」さまざまな執着を離れる。


仏教にも通じる実践行です。

人間は欲しいものを手に入れることに喜びを感じますが、手に入れた瞬間が幸せの絶頂で、そこから手放したくないという苦悩に悶絶することになります。

↓↓↓

お金•人間関係•健康•••••。

人間の悩みの多くは、「求めても得られない」か「得たものを失いたくない」かのどちらかです。


人間が「死」を恐れる理由はここにあります。

「死んだらおしまい」と考える人にとって、「死」はすべての終焉であり、手に入れたもの全部を例外なく奪い去るからです。


人生をジャンケンで例えると、「グーで始まりパーで終わる」と言えます。

赤ちゃんは拳を握りしめて産声をあげるそうです。赤ちゃんの握力はとても強いのだそうです。

それから成長するにつれ、人間は「自分の」と呼べるものを増やすことに喜びを感じるようになります。しかし、いざ死ぬ段になれば、何一つ持っては死ねません。

↓↓↓

財産•地位•名誉•家族•友人•••••。 大切に思っていたもの全部を置いていかねばなりません。これらに満たされ、多く抱えてきた人ほど、その喪失感と虚無感は計り知れません。

ちなみに私はそのほとんどを得てはいませんから手放すことは必要ありませんが、これからはわかりませんよね。

今は56年積み重ねてきた歴史が棄てられないでいるのですからね。

本来【布施】とは、仏道の入口にある修行です。「布施行」は執着を離れる練習なのです。 【喜捨】(きしゃ)とも言います。 ↓↓↓ 捨てることを喜べないのは、自画への執着心【我執】(がしゅう)が根底にあるから。

これまで握りしめていたものを思い切って手放してみると、不思議と心が楽になり清々しい気持ちになります。捨てることで代えがたいものを得ることもあるようです。 私は引越しをするような時にしか思い切った断捨離ができません。昔、元嫁が私に断りなく山のように当時大事にしていたものを捨ててしまったことがあり、100年の愛も冷め憎しみが煮えたぐりましたが、今になってみれば感謝であります。

また布施は、「与える」行為でもあります。 仏教では【房舎施】(ぼうしゃせ)という尊い布施の一つに数えられます。 さらに相手に座を与える行為は【床座施】(とこざせ)と呼ばれ、これも大切な布施であります。電車やバスに乗って席を譲ったり、車を運転中に道を譲る行為も同じです。 人間は生きている限り居場所が必ず必要です。 居場所が無くなれば喪失感は半端ありません。 私は実家を出てから実家なのに帰っても誰も「お帰り」とは言ってくれなくなり、帰る時は「さようなら」と言われる。何とも寂しかったのが今は懐かしい。今の私の居場所は、この入間市だから。自分がいてもいい場所があるのはこの上ない安らぎとなります。

また布施でも言葉は大切です。皆さまも何気ない一言に心が温められた経験はありませんか。

私たち人間が生きていく世界には言葉は欠かせませんよね。(ちなみに浄土は言葉が必要のない世界、地獄は言葉が通用しない世界と説かれています)

言葉を用いなければ自分の気持ちを相手に伝えられないし、相手の思いを知ることはできません。

たった一言が救いになることもあれば、逆に不用意な一言によって深く傷つけられてしまう場面もあることを忘れないでください。

相手の傷を覆い、心を温められる一言こそ言葉による布施【言辞施】(ごんじせ)と言い、慈しみの処方箋です。


冷たい言葉と同じく、周囲からの冷たいまなざしはとても辛いものです。冷ややかな視線ではなく、温かいまなざしを向ける【眼施】(がんせ)、にこやかな笑顔の【和顔悦色施】(わげんえつしきせ)もまた立派な施しです。


「我が家では、温かいのは便座だけ」


この川柳には笑いました。

温もりを感じるものにこそ、私たちは安心して身も心も委ねることが出来るのでしょうね。

与えることを待つより、与えることから始めてみるのも喜びへの近道かも知れませんね。

いかがでしょうか。


俺が俺が、私が私がと自己主張ばかりせずに、相手を思いやる心を育てることこそ、仏法に自らを訪ねていくことではないのでしょうか。

私はそんなことを思いながら、棄てられない症候群に悩まされています。だれか棄てて〜。

でも世捨て人にはなりたくはありません。

う〜ん、ワガママな住職でありました。

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏


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