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執筆者の写真超法寺の住職

安らかなる世界

「安らかにお眠りください」よくSNSの投稿で見かける言葉ですね。

亡くなられた方に送る言葉として弔辞などでも使われます。

しかしながら、亡き人に「安らかにお眠りください」と祈る人間がそもそも眠れずに忙しい生活に明け暮れています。それは人生のさまざまな問題に日々悩み、夜も眠れないほど忙しく走り回っていたり、私などはコロナ禍になり少ない仕事が全部キャンセルとなり3ヶ月スケジュールが真っ白になった時、毎月の支払いに頭を抱えて毎晩眠れなくなっていました。

あの出来事は今でも忘れません。

恐怖でしかありませんでしたが、その時に「苦しみ悩みの土壇場にこそ阿弥陀さまのことだけを思いなさいよ」と、声をかけてくださった開教の先輩の言葉が私を奮い立たせてくださいました。

仲間も、「末ちゃん、悩んだって仕事はないんだから、どうやったら仕事ができるかを一緒に考えようよ」と、いわゆる営業に明け暮れました。私の人生であれほどの経験はありませんでした。人間の苦悩は尽きることはありません。

私のように仏法を聴聞し、仏さまを我が身にいただくことを知らされても苦悩から逃れることはありません。それなのにそれすら知らずにただ苦悩に右往左往して生きている方にはきっと、私が知りえないほどの苦悩があるのでしょう。


そう思えば阿弥陀さまのご苦労は私以上であるのです。真実に目覚めた覚者たる仏さまの願いは、苦悩を抱えたまま我にまかせてくれよ、わからないまま私の名前「南無阿弥陀仏」を称えてくれよ、必ずどのようなあなたの人生を生きようが阿弥陀があなたの人生を共に歩み、必ずあなたを二度と苦悩しない安穏の国、浄土に生まれさせて二度と輪廻転生しない(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上)さとりの仏にするぞ、の願いを届けていてくださいます。


私たちは悲しいかな、子どもが生まれたら、「おめでとう」と大喜びしますよね。お釈迦さまは我が子が生まれた時に「嘆き悲しんだ」と言われます。なぜ?生まれるとは、縁が尽きればいつでも死んでいかねばならない厳しい命であると知っていたからです。

人間とは常に【執着】します。

「生」と「死」を分離して、「生」だけに執着し、「死」を忌避する人間の悲しさがあるのです。仏教では「生」と「死」を表裏一体として受け止めて生きていく教えであります。


仏教の教えに照らされますと、亡き人は、いかなる人も諸仏として、私の迷いの眠りを呼び覚まし、真実の世界を知れ、そして真実の世界に生まれてくれよ、とお導きくださいます。

ですから寝ている暇など無いのです。

いつまでも自分の殻に閉じこもって真実の世界を知ろうとしない私がいますから亡き人は、寝てなどいられないのです。

しかしながら、仏の大慈悲に抱かれたならば、南無阿弥陀仏のはたらきに【安らか】なる私にしてくださるのです。


「誕生は死の始まり、短命も長命も自然死も事故死も生死のいのちにかわりはない」


「ひとり居て喜べる人生は、万人と共に喜べる人生である」


「生」に執着すると、孤独が恐ろしかったら寂しかったりします。しかし私たちは一人でこの世に生まれてきたのです。これが本来の私の姿であります。ただ母に抱かれていた安心の中にありました。その母の安らぎを離れ一人で生きていくようになると人間は常に不安に悩まされていくのですね。

しかしながら、その母のような安らぎのはたらきが南無阿弥陀仏となり私と共に苦悩のまま、ひとりのまま喜べる世界が広がります。

そのまま、南無阿弥陀仏を人生の「灯」として私の人生を生きていきましょう。


【失ったものの大きさは、与えられていたものの大きさでもある】


親を見送った時にこの言葉に出会いました。

両親から自分ではわからなかったほどのたくさんの幸福をいただいていたのに、愚かな私は常に不足ばかり思っていたのだ。お恥ずかしいことでありました。

仏法不思議は、与えられていたものの大きさを私に気づかせてくださいました。

南無阿弥陀仏は私にとって、そのこてに気づくことへの促しであり、気づいたことへの頷きでもあるのです。

仏法不思議は我が身、我いのちと聞かせていただく時、南無阿弥陀仏は私のたしなみとなります。


「生かされて生くるなりけり。我が身には、常に寄り添う南無阿弥陀仏」


実感はなくとも、先にもう既に阿弥陀の願いは届けられてありました。

ようやくそれに気づかせてもらいました。

有り難きしあわせでありました。

我が父母は、諸仏のおはたらき、諸仏のお姿でありました。お念仏をお称えしながら、その父母を常に思い、感謝の人生を生きていきます。


南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏

おやすみなさい。

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